
賃貸契約の更新料って何?無駄に払わないための交渉術
賃貸物件に住んでいると、契約更新時に更新料の請求を受けることがあります。
家賃1ヶ月分を超えることもある更新料に対して「払わないとどうなる?」「そもそも必要なの?」と疑問を抱く人もいます。
実はこの更新料、交渉次第では支払いを回避できる場合もあるのです。
今回は、更新料の仕組みと、無駄な出費を避けるための具体的な交渉術を解説します。
賃貸契約の更新料とは?

更新料とは、賃貸契約の期間が満了した後も、同じ物件に住み続けるために貸主(オーナー)に支払うお金のことです。
賃貸契約では2年契約が主流であり、契約期間が終わるタイミングで契約を更新するかどうかが問われます。
このときに多くの物件で請求されるのが更新料です。
更新料の金額は物件によって異なりますが、家賃の1ヶ月分程度が相場となっており、都市部ではそれ以上の金額が設定されている場合もあります。
大事なのは、更新料は法律で義務付けられているわけではないという点です。
支払いが必要になるのは、契約書に更新料の支払いが明記されている場合に限られます。
この点については、最高裁判所の判例(平成23年7月15日)でも明確にされています。
この判決では、「更新料は賃貸人と賃借人との合意に基づくものであり、契約の内容として有効である」と判断されました。
つまり、契約書に「更新料◯ヶ月分」と記載されており、入居者がそれに同意して契約を結んだ場合には、更新料を支払う義務があるということです。
一方で、契約書に更新料に関する記載がなかったり、あいまいな表現しかされていない場合には、支払いを拒否できる可能性もあります。
更新料が発生するのはなぜ?

そもそも、なぜ賃貸契約の更新時に更新料を支払わなければならないのでしょうか?
実はこの制度、日本特有の慣習として根付いているもので、法律で義務付けられているものではありません。
しかし、契約更新のたびに請求されることが多く、見過ごせない費用となっています。
更新料が設定されている主な理由は次の3つです。
①オーナー(貸主)の収益確保のため
賃貸経営では、家賃以外に安定収益を確保する手段として更新料が利用されているケースがあります。
空室リスクや修繕費、固定資産税などの負担を抱えるオーナーにとって、契約更新のたびにまとまった収益を得られる更新料は、経営の安定にもつながります。
②管理会社による更新手続き業務の対価
契約更新にあたっては、書類の作成、契約条件の確認、借主とのやり取り、家主への報告など、事務的な業務が発生します。
これらの作業にかかる人件費や事務コストをカバーするために、更新料の一部を「更新事務手数料」として徴収している管理会社も少なくありません。
③家賃を抑えている代わりに、更新時で調整している
中には、初期の家賃を少し安く設定する代わりに、更新料を後から請求するという運用をしている物件もあります。
こうすることで、入居時のハードルを下げつつ、長期的に収益を確保できるというわけです。
更新料の相場と地域差
「更新料って、どこに住んでいても同じようにかかるものじゃないの?」
そんな疑問を持つ方も多いかもしれませんが、実は更新料には明確な地域差があります。
エリアによって更新料の文化や商習慣が異なり、同じ日本国内でも請求される金額や割合には大きな違いがあるのです。
以下は、地域ごとの傾向をまとめた一覧表です。
| 地域 | 更新料の傾向 |
|---|---|
| 東京都・神奈川 | 家賃の1ヶ月分が一般的(1.5ヶ月のケースも) |
| 関西圏(大阪・京都) | 「更新料なし」の物件が多く、設定率は全国でも低水準 |
| 地方都市 | 0.5ヶ月〜1ヶ月分が相場。交渉の余地あり |
少し前の資料になりますが、国土交通省の「民間賃貸住宅に係る実態調査」によると、東京都23区では賃貸契約の約65%が更新料1ヶ月以上と回答しており、首都圏では更新料がほぼ常識となっています。
一方で、関西エリア(大阪・京都など)では「更新料なし」の物件が過半数を占めるなど、そもそも更新料を設定しない文化が根付いています。
また、地方都市では「更新料が必要でも、0.5ヶ月分程度で済む」「相談すれば減額・免除されることがある」といった柔軟な運用が見られるケースもあります。
東京では当たり前のようにかかる更新料が、「関西ではゼロ」「地方では交渉可能」となることも珍しくないのです。
もし引っ越しを検討している場合は、住むエリアによって更新料が大きく異なる可能性があるという点も、費用計算のうえで押さえておきたいポイントです。
更新料は交渉できる?

結論から言うと、契約書に更新料の支払いが明記されていない場合の更新料は交渉可能です。
あまり知られていませんが、更新料は法律で定められた強制的な費用ではなく、あくまで契約上の取り決めにすぎません。
「絶対に払わなければならない」というものではないのです。
では、どのような状況で交渉が成功しやすいのでしょうか?
●長期入居(2年以上)している
長く住み続けている入居者は、家主にとっても安定した収入源であり、信頼できる存在です。
「このまま住んでほしい」と思われることが多く、更新料の交渉が通りやすくなります。
●空室が続いている物件
空室率が高いエリアや、しばらく空き部屋だった物件では、家主側も「更新してくれるなら」と柔軟に対応してくれる可能性が高まります。
●閑散期(1〜2月など)に更新時期が重なる
繁忙期(3〜4月)に比べて入居希望者が少ない時期は、退去されると再募集が難しいため、「更新料カットでつなぎとめる」判断がされやすくなります。
更新料の交渉術|実践テクニック5選

画像:デザイナーズ・リノベーション賃貸物件サイト|リノッタ
①契約更新の1〜2ヶ月前に交渉を始める
更新料の交渉を成功させるうえで最も大切なのは、タイミングです。
特に注意したいのが、早すぎず、遅すぎない時期に交渉を切り出すこと。
おすすめのタイミングは、契約満了日の1〜2ヶ月前。
この時期であれば、まだ更新手続きが本格的に進んでおらず、管理会社やオーナー側にも柔軟に対応してもらえる余地があります。
反対に、更新直前や期限を過ぎた後に交渉しようとしても、「もう書類が作成済みなので変更できません」と断られてしまう可能性が高くなります。
特に繁忙期などは、管理会社も業務が立て込んでおり、柔軟な対応が難しくなる傾向にあります。
そのため、そろそろ更新の時期だなと気づいた時点で、早めに契約書を確認し、更新料の有無と金額をチェックした上で、準備を整えておくことがポイントです。
②契約書を確認して根拠を持つ
交渉を始める前に、まずやるべきことは契約書の内容をよく確認することです。
更新料は、法律で一律に定められているわけではなく、あくまで契約に基づく費用です。
契約書に明確な記載があるかどうかが、交渉の成否を大きく左右します。
たとえば、契約書の中に「契約更新時には賃料の1ヶ月分を更新料として支払うものとする」といった記述があれば、その支払い義務は基本的に有効と見なされます。
一方で、「更新時の条件について特段の定めなし」や、「更新手数料のみ記載」などの曖昧な表現しかない場合は、交渉の余地があるといえるでしょう。
賃貸借契約書とは別に交付されている「重要事項説明書」にも更新料に関する記載があるかどうかを確認しておくと、より万全です。
事前に契約書の根拠を把握しておけば、感情的ではなく、冷静で論理的な交渉が可能になります。
③他の物件の相場と比較
更新料の交渉をする際には「周辺の他の物件ではどうか?」という視点も役に立ちます。
自分が住んでいるエリアの同条件の物件で更新料なしや0.5ヶ月分などのケースが多いことがわかれば、それを根拠として交渉材料に使うことができます。
実際のやり方としては、SUUMOやLIFULL HOME’S、アットホームなどの賃貸情報サイトを活用し、同じエリア・間取り・築年数の条件で検索してみましょう。
更新料の有無や金額が表示されている場合もあり、自分の物件が相場に比べてどうかが一目でわかります。
感情ではなくデータに基づいて伝えることで、管理会社やオーナーの心象も良くなりやすいため、交渉の成功率が高まります。
④引越しも選択肢にあると伝える
更新料の交渉において有効な手段の一つが、退去も検討しているというスタンスをやんわりと伝えることです。
もちろん、強い言い方や脅しのような表現は逆効果になりかねませんが、更新料の内容によっては引越しも視野に入れているといったニュアンスで伝えることで、管理会社やオーナー側に再考のきっかけを与えることができます。
空室リスクを避けたいオーナーにとっては、安定して住んでくれている入居者が出ていくことは避けたい事態です。
そのため、他の条件(家賃・立地・築年数など)に満足しており、更新料さえ見直してもらえれば住み続けたいという意向を伝えると、交渉が前向きに進みやすくなります。
⑤丁寧な口調で文面交渉
更新料の交渉は、口頭よりもメールやLINEなどの文面で行うのがおすすめです。
文章にすることで、自分の希望を整理して伝えられるだけでなく、相手にも冷静に検討してもらえる時間を与えることができます。
ポイントは、あくまでお願いや相談というスタンスで、丁寧な言葉遣いを心がけること。
たとえば、いきなり「更新料を下げてください」と伝えるのではなく、まずは感謝やお礼の言葉を添えて、相手の立場にも配慮した表現を使うようにしましょう。
契約書で注意すべき「更新料の記載」ポイント
更新料にまつわるトラブルは、契約書をしっかり読んでいなかったことが原因で起きる場合が多いのです。
多くの入居者が「家賃や入居日」などには注目していても、更新時の条件までは深く確認していないというのが実情です。
しかし、更新料は契約書に明記されている場合に限り有効とされるため、事前のチェックは非常に重要です。
特に以下の3つのポイントは、必ず目を通しておきましょう。
①更新料・更新事務手数料の有無と金額
まず確認すべきは、更新料という文言があるかどうかです。
たとえば契約書に 「契約更新の際は、月額賃料の1ヶ月分を更新料として支払うものとする」 「更新事務手数料として2万円を別途支払うこと」 といった記載がある場合は、法的に支払い義務が生じるとされる場合がほとんどです。
更新料と更新事務手数料は別物なので、両方がかかる可能性もあります。
金額・支払先・支払時期も含めて、しっかり確認しておきましょう。
②自動更新の条件に注意
契約書の中には、更新手続きについて以下のような記載がある場合があります。
「期間満了後、特に申し出がなければ自動的に契約を更新するものとする」
この自動更新条項は一見便利に思えますが、自動的に更新される場合でも、更新料の支払いが発生することがあります。
手続きしてないのに請求されたと感じるかもしれませんが、契約書に明記されていれば支払い義務があると判断されるため注意が必要です。
③ その他関連費用(火災保険・鍵交換費など)
更新時には、更新料だけでなく火災保険の再契約や鍵交換費用、事務手数料などの付随費用が発生する場合もあります。
これは契約書本体だけでなく、重要事項説明書や更新案内の中に記載されていることが多いので、書類はまとめて確認するのがおすすめです。
火災保険の再契約:1〜2万円程度
鍵交換費:1万円前後(防犯のために任意で提案されることも)
事務手数料:1万円〜2万円程度
など、更新時には家賃以外にも複数の費用がかかることがあるため、あらかじめ把握しておくことで「こんなはずじゃなかった…」という事態を防ぐことができます。
更新料なし物件はある?
「できれば更新料なんて払いたくない…」 そう思っている方にとって気になるのが、更新料なしの物件は本当にあるのか?
という点ですよね。
結論から言えば、更新料がかからないゼロ更新料物件ありますし、近年はその数も増加傾向です。
まとめ
更新料は「慣習だから」と何となく支払ってしまいがちですが、数万円単位の出費になることも多く、軽視できない費用です。
だからこそ、更新のタイミングを迎えたら一度立ち止まり、「本当にその金額を支払う必要があるのか?」を冷静に見直すことが大切です。
無理のない形で、賢く、納得のいく住まいを続けていくためにも、ぜひ今回のポイントを参考にしてみてください。
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